試料の準備方法と形状

サンプル準備は,分析の可否を決める,最も重要な要素です.
10 μm単位のズレや表面平滑度の精度が出なかったり,エポキシの選択によって脱ガスが増えたり,実験に影響を与える様々な要素があります.

ホルダの形状

分析には,カメカ社のSIMS用ホルダを使用します.
試料形状に合わせて,様々な形のホルダがあります.ただ,試料室の形状としては主に二種類あり,四角形(1辺2.5 cm角)と円形(1インチ)で,厚み5 mm程度を推奨しています.(深さに関しては,最大 1 cm 程度まで可能です.)

ホルダへの設置

ホルダ上部の縁にツバのついたホルダ・試料上部にメッシュのついたホルダなど,様々な形状のホルダがあるため,選択することは可能です. 基本的には,ホルダの上面,または,下面の平行度を元に,試料を「押し付け」て設置するのが理想的です.但し,試料の横面にホーローセットを当てて止めることも可能です (平行度の精度は下がる可能性があります).
最も分析精度が出るのは,試料室の中心部分とされており,また,四角形や円形の端の部分は,ビームが届かない可能性もあるので,試料はできる限り, 試料室の中央寄りに設置してください.
但し,表面に出っ張りのある試料や,分析面とその逆面が平行・平坦ではない試料などは,設置や設定に注意が必要です.

エポキシについての注意

SIMSの装置内は,超高真空(10E-9 ~ 10E-8 Torr)です.高真空用のエポキシでないと,脱ガスし,真空度に影響がでます.エポキシに載せる場合には,その種類をご検討ください.
なお,水などの分析の場合には,エポキシではなく,低融点メタルに埋め込むことでの固定をおすすめします.

ドキュメンテーション

SEMのような分析手法との大きな差は,ビームの場所を見つけにくい,という点です.分析したい場所の試料の形状について,下記2つのものを持参する必要があります.

  • 分析箇所のSEM像 (BSEのほうが良いですが,SEM像・EDS像の組み合わせでも良いです)
  • 光学写真 (低倍率 ~ 高倍率まで.但し,これらは北大で撮影することとも出来ます). 面内の試料の相が分かれている場合には,どのような像を見たいのか(つまり,どの相とどの相における,どの同位体が,分析上最も良い条件にあっていてほしいのか)を,明確にしておく必要があります.

また,各回の分析では,「試料名とその設置位置が書かれたリスト」と,「分析したい同位体の一覧,および,期待される濃度の一覧」,および,「妨害イオンとなり得る同位体の有無」について,資料が必要です.   

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